業者から見る外壁塗装のキャンセルマナー

一般に塗装業者といえば、ペンキだらけの格好をしてあまり柄が良くないというイメージを持つ方もいるかもしれません。

昔によく聞いた話では、たばこを吸いながら作業するとか言葉使いが荒い、残ったペンキを捨ててしまう、お客様の庭でおしっこをするなど、今では考えられない行動を時々聞いたものです。

時代の流れでそういったマナーや規律的な問題のある行動はほぼなくなりましたが、塗装業者としての道義的な問題は残されたままです。

たとえば塗装に素人なお客様に対して嘘や誇張的な説明、法外な値段や後からの過剰請求などがあります。

塗装業者として起業をするためには資格や許可などが不要です。

他業種からの参入が増えているため今はもう様々な業者が入り乱れています。

見た目のマナーは昔よりはるかに改善されてきましたが、道義的なマナーは昔よりも一層低下してきているように感じます。特に屋根工事に関することはニュースでも頻繁に取り上げられています。

おそらく、営業を開始するためには資金も不要で、手っ取り早くお金に換えることのできる方法として選ばれているのかもしれません。

この道義的な問題は、業者側だけのものではありません。もちろん、多くのお客様はそうではないのですが、多くの工事を手掛ける弊社では、一部のお客様から道義的に問題のある行動を受けることもあります。

その中でも、最も影響を受けるのは契約キャンセルです。

弊社では工事前のご近所挨拶廻り以外一切こちらから能動的な営業はしません。すべて待ち受けのスタイルです。新規にお問い合わせいただく方やご紹介、10年一回りして以前塗装をしていただいたお客様からリピートとしてご注文を頂く事例なども相当数増えてきました。

訪問販売などをする業者は積極的にお客様の方へと営業や工事提案をするスタイルのため、もし契約などに発展しても後から契約を取り消すクーリングオフなどが適用出来ます。

一方で弊社の場合こちらから営業をすることはないため、クーリングオフが認められていません。すべてはこちらから持ち掛ける提案などは一切なく、お客様からの希望や要望で始まった契約だからです。

ちなみに契約は「工事をお願いします」という口頭の約束でも効力が発生します。

契約がなされると一般的に業者は工事の段取りや手配を始めます。足場工事や職人の日程調整、また塗装工事というものは足場や塗装の職人だけが現場に入るわけではありません。

その家に応じてその他シール職人・屋根職人・防水職人も入ります。足場を組むために必要な建物に付随するカーポートなどの脱着作業も入ります。

通常であれば天候や予想外な作業などを除き工程に極端な狂いが生じることはほぼありません。

工程の日程調整というものは、様々な職人が入り乱れて調整していくため複雑です。職人各自に数週間あるいは数か月先までの予定の進行状況を確認します。

一つの家に対しても各種職種によって作業する順番もあります。足場→シール→塗装→屋根工事などです。その家にもよりますが順番が狂ってしまうとすべての職人は日程の変更を余技されてしまう可能性が出てきます。

もし日程変更が発生した場合は職人を遊ばせるわけにいかないので、他の工事で埋め合わせをします。

狂いが生じれば職人も含めて再調整となり、もちろん他の現場への影響も出てきます。

そのような背景の中、お客様からキャンセルをされてしまうことは多大な影響を受けます。いずれもお客様の事情でのキャンセルなのですが、中には他業者さんから価格の値引きの申し出からキャンセルする方もいます。

クーリングオフは出来ないのですが、それを拒否して無理に工事をしたとしても恐らくお互い気持ちよく工事を進めることはできないでしょう。

スムーズな契約であれば起こり得なかったほんの些細なことでもクレームにつながりやすくなるため、致し方なくキャンセルに同意します。

本来、クーリングオフが出来ないことや、一般的な戸建ての場合、最低2週間という期間を必要とする工事の手続きや詳細については、既に説明しています。そのため、工事の進行や調整には複数の段階が含まれることを理解していただいているかと思います。

見積りというのは、図面から数字を拾い出して計算することだけでなく、家を長持ちさせるために施工方法や塗料も厳選しながらエネルギーをかけて作ります。

契約が成立すれば、見積もりに従って工事を進めていくため、途中での変更は多くの手間を要します。無料の見積もりであっても重要な責任が伴います。

過去にキャンセルの申し出を拒否したことは一度もありません。契約を受け取った際には、すぐに内部調整を開始します。そういう意味で突然のキャンセルは大きな影響を与えます。

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まだ金銭面的な事情を明らかにしてくれる方は理由が明白なため理解ができるものですが、理由を教えてもらえないままの連絡もあります。

もちろんお客様の事情や理由は尊重します。ただ、キャンセルの理由を詳しく知ることで良いサービスを提供する手助けとなります。

最近、ネット上での一括見積りのようなサービスが増えてきました。それに伴い、複数の業者からの見積りを比較することが容易になった一方で、どの業者からの見積もりかを忘れてしまうこともあるようです。

私が購入者側に回った時の状況にも同じことが言えるのですが、道義的な責任というのは売る側と買う側がお互いに意識してそれだけ契約するまでの過程においては慎重に事を運ばなければならないと感じます。

そんな道義的感覚を欠如させてしまった一例は、業界の参入障壁が低いというのもありますが、IT業者による一括見積などのようなサービスを展開しているというのも理由の一つとしてあります。

見積りを提出したそばから、「他業者さんにもしお願いした場合は一方入れた方がいいですか?」という方もいらっしゃいます。

そんなデリバリーのような感覚に似た気持ちで見積もりを取ることが出来る雰囲気を作り上げてしまいました。

もちろん大多数のお客様はそうではないですし、契約につながらない見積り業務があってを含んでの塗装という仕事です。

でもそういう気軽に見積依頼の感覚が広まっていくと、どの業者を選ぶべきか判断が難しくなるだけでなく、業者のほうも多くの見積もりを作成する時間が取られ、契約率を上げるために誇張や虚偽の説明に走ることにもつながります。

一方で他業者から一切見積もりを取らないお客様もいます。それだけ信頼してもらっているのか、色々調べたうえで一度決めたことに間違いがあっても自分に責任があるという覚悟で依頼してもらっているのかはわかりません。

初めから一社だけに絞って契約を決めてしまうというのはいずれもとてもリスクを背負った行動だと思います。

そのようなお客様に対しては、工事の質は他のお客様と変わらないと思いつつ、気持ち的には決して後悔させない対応をしなければならないという気持ちに駆られます。

今後は弊社側も社員のモチベーションを維持するためにもお客様を見る目をしっかりもって、多くのお客様により良い工事を提供していきたいと思っています。

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