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戸建てによって原因いろいろ 雨漏りの事例

By 2022年3月11日1月 6th, 2023スタッフブログ, 松尾

最終更新日:2023年1月6日  公開日:2022年3月11日

お客様から、雨漏り工事についてのご質問をよく頂きます。

ネット上に掲載されている事案を引き合いにだされるのですが、実は雨漏りの補修工事や防水工事というのは、家によって補修箇所が違うためネットの事案は目安になりません。故障した車のように原因が明確であればいいのですが、家は非常に大きく複雑な造りゆえに、おさめかたも一つではないのです。

また雨漏り工事をする上で、大切な壁の下地やベースとなる新築時の施工について知らない方も。

今回は外壁の防水についてと、さまざまな原因でおこる雨漏りについてご説明いたします。

サイディングとモルタルの雨漏り原因

外壁の防水工事は、サイディング壁もモルタル壁も下地の仕様は同じです。

上記写真のように構造壁に透湿防水シートを張り、胴縁とよばれる外壁材と構造壁の通気層を作るための枠組みを入れて、サイディングの場合はその上に外壁材を重ねます。

防水工事とは言いますが、何も雨水の浸入を止めることだけが防水工事ではありません。

このように、壁の中に入り込んだ雨水を逃がすのも立派な防水工事なのです。


(写真は通気ラス工法)

さらにモルタル壁の場合は、先ほどの防水加工を施した下地の上にラス網と呼ばれる網状の素材を1枚入れ、それに引っかけるようにしてモルタルを塗ります。

しかしモルタル壁の場合、このラス網(ラスカット)がクラックの原因となるのです。

モルタルを壁に固定するためのラス網は、板状のため継ぎ目があります。

どんなに上手く処理をしたとしても、家の壁は湿度や気温、振動などで動くので結合部分からクラックが入ってしまうことに。クラックは放置すると雨漏りの原因となります。

しかし、このクラックに恐怖を抱く必要はないのです。

ネットに掲載されているクラックについての情報は、クラックができることが悪であるように書かれていますが、モルタルの壁を選ぶ上ではクラックが入るのは仕方がありません。

このクラックに対して定期的に処置さえ出来れば、雨漏りを最小限に抑えながらモルタル壁と上手に付き合って行くことができます。

このように書きますと、まるでモルタルは補修の手がかかるから、サイディングの方がいいのではないかと思うかも知れませんが、サイディングにも同じように利点の裏に欠点もあるのです。

その欠点の中でも良くでる問題が、サイディングボードとサイディングボードをつなぐシーリング。

このシーリングは、定期的な処置をせずに放っておくと劣化して亀裂が入り、そこから雨水が浸入します。最近では15年持つシーリング…などもありますが、シーリングが長期間持っても今度は壁材が持たないためバランスがとれず、結局雨漏り原因となることも。

さらに、以前こんな例もありました。

壁の近くにエアコンの室外機を置いていたことで、室外機が送風機の役目になってしまい水が壁の上まで上がってしまいサイディングが腐ってしまったというお宅が。

つまり、どんな壁材を選んでも必ず定期的なメンテナンスが必要なのです。

【あわせて見たい:ラス網を使用したモルタル擁壁の改修  関連動画】

外壁材の問題点だけはない、施工も問題になる

先ほどモルタル壁とサイディング壁のクラックや雨漏りが起きる原因についてお話しいたしました。次は工事の状態についてです。

上記の写真をご覧ください。壁には必ず防水工事の一環として水切りの上で水が抜ける隙間を作ることになっています。

写真を見ますと、上からサイディング壁、その下に水が抜ける隙間、水切り(アルミなどの金属製カバー)、土台の順になっているのがお分かりいただけますでしょうか?

この隙間が、壁の中に侵入した雨水を外に出す際に非常に重要なのです。

サイディングの場合は水切りの上に隙間を作るのは比較的作りやすいのですが、モルタルの場合は隙間が塞がり雨水の逃げ場がない仕上げになっていることもあります。

こちらの写真のモルタルも、水切りの上までモルタル壁がピッタリくっついていて隙間がありません。

実はこの家は壁の中に入った水の抜ける隙間が無いため、壁中で湿気が溜まり雨漏りの原因となりました。

この壁を施工したハウスメーカーは、構造壁とモルタルの間に隙間があると言っていたのですが、塗料で塞がれたとされる隙間にカッターをいれてみると、新築工事の際に構造壁とモルタル壁の間に養生テープとして挟んだガムテープが……。

本来であれば、このガムテープを工事後に取ることで壁の内側に隙間ができ水が抜けるのですが、ガムテープで塞いだままだったのです。

しかし、モルタル壁で隙間がない壁は多くあります。

もともとの施工で、水切りの処置が上手くいっていないために雨漏り原因となることもあるのです。

この場合、いくら壁内部に防水処理をしてあっても意味がありません。

水切りの隙間が空いていないと、どのようなことになるかというと、この写真の壁のようになります。

フェンスの奥に、家の外壁が写っているのですが、水切りの上が黒くなっているのがお分かりになりますでしょうか?

壁の中に入った水が出られず、水が溜まったことでこうなってしまったのか、はたまた水を吸ってしまったのか。

こうなってしまっては、大がかりな補修工事もしくは壁の貼り直しをするしか方法が無くなってしまうのです。

次にご紹介するのは、特殊な雨漏り原因です。

つい雨漏りがあると、雨漏り原因の代表的なものに自分の家が該当するのではないかと思いがちですが、雨漏りというのは必ずしもセオリー通りの症状がでるとはかぎらないのです。

施工不良などによる予想外な雨漏り原因には、以下のようなものがあります。

施工不良などによる雨漏り原因

例えば、壁の中に通常であれば打たない箇所に釘が打ってあったことで、雨漏りになってしまったこともありました。釘とその釘穴をつたって水が侵入し、ポタポタと水が1点に垂れ続けたことで雨漏りとなったのです。

他にも、トイレの配管のつなぎ方にミスがあり、そこから雨漏りになっているお客様宅もありました。

さらに、防水紙の貼り方を上下逆にしてしまったために、雨漏りになっているお宅も……。

トイレの配管ミスによるお客様宅などは、他の業者にも見せたところ屋根の不具合による雨漏りと診断され、屋根の葺き替えを提案されたのだそうです。

たしかに、雨漏り原因として屋根は問題点が多い箇所ではありますが、あまりにも的外れといえます。

また施工不良とは少しちがいますが、雨漏り原因を探す際に、間違えた散水試験をしたことで雨漏り原因が見つけられないことも。

実は散水試験は下から順に水をかけていかないと、外壁にある雨漏り原因を探し出すことができません。

しかし、『雨漏り原因のほとんどは屋根』と思い込んでしまうと、屋根からザーッとかけてしまうのです。

こうした要因から、雨漏り工事をしても雨漏りがおさまらず何度も工事する羽目になるお客様もいらっしゃいます。

 

【あわせて見たい:目に見えない雨漏りを可視化 関連動画】

雨漏りはネットにの事例に当てはまるとは限らない

ここまで紹介しましたように、雨漏り原因は壁が持つ特性や、施工方法、施工不良など、原因は千差万別です。

良くお客様から、雨漏りが「直る」「直らない」の2択で返答を迫られることがあります。

もちろん仕事が欲しいだけで、工事が終わったら関係が切れてしまう業者であれば「直ります!」と満面の笑みで答えるでしょう。

しかし、僕は水の怖さを知っていますし、家というのはさまざまな雨漏りポイントがあり、家の環境もどの家一つ取っても同じでなく、雨漏り原因の特定は難しいため「絶対直ります」とは言えないのです。

雨漏りを止める努力はもちろんしますし、職人としては「必ず雨漏りを止めてみせる!」という気概をもって挑んでいます。

それでも、雨漏りというのは家によってさまざまな要因があるため、YES・NOではお答えできません。

しかも、雨漏りは一度補修をしたからといって新築と同じ状態にはならず、その後は雨漏りをどうにかなだめながら付き合っていくことになります。

だから雨漏りは、「直す」ではなく「おさめる」と僕はお客様にお伝えするのです。

ここまでご紹介したように、雨漏り原因は実にさまざまと言えます。

ネットに載っている雨漏りの原因は、あくまでもまったく状況の違う家の一例です。

家が建っている環境、太陽の当たる方角、建てた施工会社や職人、すべての条件が同じ家はありません。

ご自身の家の状態に向き合えるかどうかで、防水工事と雨漏り補修は大きく変わります。

ネットの不確かな情報を無理矢理自分の家に当てはめるのでは無く、ご自身の家の状況に向き合ってみてください。そして、私達業者の提案にも耳を傾けて見て下さい。

誠実な業者であれば、なんのために必要な工事なのかしっかりと説明をしてくれるはずです。

そうすることで、必要な箇所に必要な防水工事を行い、雨漏りをおさめながら家を長く持たせることができるでしょう。

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