屋根の傷み、外壁の色あせ、バルコニーの床の劣化。住まいの外まわりを見直すときは、それぞれに必要な工事を整理することから始まります。見える色を塗り替える工事と、雨水の浸入に備えて防水層をつくる工事では、目的も施工方法も異なります。
今回は、世田谷区の戸建て住宅で行った改修をご紹介します。屋根は新しい屋根材を重ねるカバー工法、外壁と付帯部分は塗装、バルコニーと外構はウレタン防水で施工しました。仕上がった表面だけでなく、その下にある層や、建物の足元の補修にも目を向けた工事です。
1.雨染みの相談から、屋根全体をカバー工法で改修
今回のお住まいでは、室内の天井に雨染みが見られました。一方、屋根を外から確認した段階では、雨漏りの原因と結びつく明確な破損箇所を特定できませんでした。染みの位置だけで雨水の入口を決めつけず、屋根全体の改修も含めて検討する必要がある状態でした。
実施したのは、既存のスレート屋根の上に新しい防水紙と屋根材を重ねるカバー工法です。屋根材には「スカイメタルルーフ」を使用しました。もとの屋根は暗い色合いでしたが、改修後は赤系の屋根になり、外観の印象も変わっています。


施工では、棟の金属部材や雪止めなどを撤去し、防水紙を取り付けました。その上で、屋根の端部などに納める金属部材、屋根材、換気棟を取り付けています。「棟」は屋根の面が合わさる頂部のこと。平らに見える屋根の面だけでなく、端や頂部まで順番に仕上げていく工事です。
カバー工法という名前から、新しい屋根材を載せるだけの工事と思われることもあります。しかし、屋根材の下にある防水紙や、部材同士が接する部分も大切です。また、同じように古く見える屋根でも、下地の状態によって必要な改修は変わります。塗装・カバー工法・葺き替えは、築年数だけで一律に選ぶものではありません。
工法の違いは、屋根工事とカバー工法の解説でも紹介しています。
別現場の関連動画:スカイメタルルーフを使ったカバー工法の流れをご覧いただけます。建物の状態や細部の仕様は、今回のお住まいと同一ではありません。
2.外壁は高圧洗浄を行い、下塗り・中塗り・上塗りへ
外壁の塗装は、高圧洗浄から進めました。今回の外壁には、凹凸のある塗り壁や、レンガ調の仕上げの部分があります。汚れを落とす作業と、塗装する作業を分けて考え、まず外まわりを洗浄していきました。


塗装する面の汚れが残っていると、その上に新しい塗料を重ねることになります。洗浄は見た目をきれいにするだけでなく、次の塗装に向けて面を整える工程です。洗う場所の状態に合わせた作業が必要になる点は、外壁塗装前の高圧洗浄でも説明しています。
塗り壁部分の下塗りには「パーフェクトフィラー」を使用しました。その後、「パーフェクトトップ」で中塗りと上塗りを行っています。いずれも施工当時の製品名です。白い下塗り面の上に仕上げの色が重なっていく様子を見ると、完成時には隠れてしまう工程がよく分かります。


下塗りは、仕上げ材を塗るための下地を整える役割を持ちます。中塗りと上塗りでは、仕上げの塗膜を重ねていきます。「何回塗ったか」という数字とともに、何をどの段階で使ったかが大切です。この現場では、下塗り材と仕上げ材を使い分け、窓まわりなどを養生しながら施工しました。
仕上げ色はND-281です。黄みのある外壁に、後ほどご紹介する濃色の付帯部分が加わり、窓やバルコニーまわりの輪郭がはっきりしました。写真では日差しや影によって色が違って見えるため、色選びの際には実物の見本と照らし合わせることも大切です。


3.軒天や笠木など、外壁の周囲も塗り直す
外壁と一緒に施工したのが、軒天、バルコニーの笠木、手すり、水切り、雨樋、庇などの付帯部分です。軒天は屋根が外壁より張り出した部分の裏側、笠木はバルコニーの壁の上端を覆う部材を指します。普段は名前を意識しない場所ですが、外まわりの仕上がりに関わる部分です。
軒天は、表面をこすって整える下地調整を行い、下塗り、上塗りへ進めました。笠木ではねじ部分のシーリング処理も行っています。広い外壁と比べると小さな作業に見えても、塗る前の準備や細部の処理を含めて仕上げる必要があります。


バルコニーでは、壁や笠木の塗装と、床の防水を行いました。同じ場所にある部材でも、外壁用の塗料を塗る部分と、防水材で床をつくる部分があります。工事を検討するときは「バルコニーを直す」という一言でまとめず、壁・上端・床のどこを施工するのか確認すると、見積もりの範囲も理解しやすくなります。
4.バルコニーはウレタンを二層に重ね、トップコートで保護
施工前のバルコニー床には、表面が部分的に傷んだ様子が見られました。今回は表面の塗り替えだけで終えず、ウレタン防水を施工しています。ウレタン防水は液状の材料を塗り広げ、硬化させて水を通しにくい層をつくる方法です。
まず、表面を整えるケレンと清掃を行い、プライマーを塗布しました。プライマーは、下地と次に塗る防水材との密着を助ける材料です。仕上げの色では見分けにくい工程ですが、防水材を重ねる前の準備に当たります。


その後、ウレタン防水材を一層目、二層目と重ねました。床の平らな部分と、壁際の立ち上がりに施工しています。立ち上がりとは、床の防水が壁側へ立ち上がる部分のこと。床面だけを見ず、周囲とのつながりも含めて仕上げていきます。


最後にトップコートを塗布し、防水層の表面を保護しました。トップコートと、その下のウレタン防水層は役割が異なります。床が同じグレーに見えても、トップコートだけを塗り直した工事なのか、防水層から施工した工事なのかは、見た目だけでは判断しにくいものです。
今回の施工は、プライマー、ウレタン二層、トップコートという流れです。お住まいの床を点検する際も、色あせだけなのか、防水層に傷みがあるのかを分けて確認することが、必要な工事を考える手掛かりになります。バルコニー・ベランダ防水の解説もご参照ください。


別現場の関連動画:床に置かれた室外機の下を、どのように施工するかを紹介しています。支持する方法や設備の条件は現場によって異なります。
5.建物沿いの細い外構部分にも防水を施工
防水工事は、バルコニーだけでなく建物沿いの外構部分でも行いました。窓の前に細長い床が続き、配管や壁との取り合いがある場所です。通りから見える大きな壁面とは違い、日常では細かく見る機会が少ない部分ですが、ここも今回の施工範囲に含めています。
窓まわりの既存シーリングを撤去し、ケレンと清掃で下地を整えました。その後はプライマー、ウレタン防水材、トップコートと工程を進めています。施工前には古い表面が残っていた床に、新しい防水の層を重ねていきました。


このような細い場所では、床と壁の境目、窓の下、配管の周囲などが近接しています。一つの面だけで施工範囲を考えると、周囲とのつながりを見落としやすくなります。大きな面と細部をあわせて確認することが、外まわりの改修では大切です。
6.基礎まわりの欠損も補修し、工事を締めくくる
建物の足元では、基礎まわりの状態を打診で確認し、配管が通る部分や表面の欠損箇所を補修しました。打診は、軽くたたいたときの音などから表面や下地の状態を調べる作業です。欠けた部分には補修材を入れ、周囲になじむように面を整えています。


外壁が明るく仕上がると、目はどうしても広い壁面へ向かいます。しかし、室外機の陰や配管の周囲にも手を入れることで、今回必要だった補修を進めました。屋根のカバー工法、外壁の塗装、床の防水、欠損部の補修は、それぞれが異なる役割を担っています。
工事では塗装部分のチェックに加え、外構防水の仕上がりも確認して締めくくりました。住まいの外まわりを見直す際は、気になる場所と症状を整理し、残せる部分と改修が必要な部分を一緒に確認していきましょう。塗装職人では、現場の状態を見ながら、部位ごとの工事内容をご説明します。
